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幹部候補の早期育成制度は少数のエリートと多数の廃人を同時に作る

 人事コンサルティング会社社長の城繁幸氏が、以下の様な相談を受けたことがあるそうです。

「ある会社で、うつ病等のメンタルトラブルによる休職・通院者が1割を超えた。残業も特別多いわけでもなく、有給休暇の消化率も良い。経営者も顧問の社会保険労務士も、原因がさっぱりわからず困惑していた。実は原因は、幹部候補の早期育成制度の導入によって、早い段階で将来が見えてしまい、多くの社員にとって希望の無い状態が生み出されてしまったことにあった。」(以上、「週刊東洋経済」2008/10/04号の連載記事「だから若者は幸せになれない」第41回より抜粋)

ある会社の10人の新入社員の入社時のモラルが、全員100だったと仮定します。そして数年後に、幹部候補の早期育成制度によって、そのうちの2人が英才教育を受けたとします。それによって選ばれた2人のモラルが50%アップし、選ばれなかった残り8人のモラルが、逆に30%ダウンしたと仮定すると、社員全体のモラルは、以下の通り変化します。

<幹部候補の早期育成制度実施前>

モラル:100×10人=1000

<幹部候補の早期育成制度実施後>

モラル:150×2人+70×8人=860

つまり幹部候補の早期育成制度の導入によって、会社全体の士気は却って下がってしまうのです。何故こんなおかしな結果になるかというと、理由は極めて簡単で、選ばれた者よりも選ばれなかった者の方の絶対数が多いからです。城繁幸氏は続けて「例えて言うならボクシングの試合において、3ラウンド早々に判定負けが宣告されたが、客の手前12ラウンドまで闘うことを強要されるようなものだろう。」と記述していますが、正にその通りでしょう。(私だったら躊躇せずに、レフェリーや判定者をぶん殴って、さっさとリングを降りることを選びます。)

 

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